お問合せ
>HOME
BACK
>INDEX

過眠症について

森 貴俊
  (もり たかとし)
心療内科 新クリニック副院長
長崎市住吉町2-26-2F
TEL 095-848-7867

心療内科 新クリニック

「過眠症」とは?

 過眠症とは、日中(本来起きて活動を行う時間帯)に過剰な眠気が出現し耐えることが困難、もしくは眠気が突然に襲ってきて無意識のうちに眠りに落ちている状態のことをいいます。
 過剰な眠気によって集中力や作業能率が低下し、学業や仕事に支障をきたすことがあり、交通事故や作業ミスにつながる場合もあります。また、慢性的な日中の眠気から疲労感や頭痛、意欲の低下、抑うつ気分などに苦しむこともあるため、早期の対応が求められます。

 「眠気が強い」、「居眠りをしてしまう」という訴えに対し、その眠気がどの程度のものであるかをまず評価する必要があります。
 主観的眠気評価尺度として代表的なのが、エプワース眠気尺度で、11点以上であれば眠気があると考えられます。しかし、本人に眠気の自覚が乏しい場合もあるので、家族からの情報も重要です。

 ■エプワース眠気尺度

 以下の状況でうとうとしてしまったり、眠ってしまったりしてしまうことがありますか。最近の日常生活のことを思い出して記入してください。質問のなかには、最近行っていないこともあるかもしれませんが、もしその状況にあったとしたらどうなるかを考えてご記入ください。

以下から当てはまるものを選んで点数で答えてください。
  0:居眠りすることは絶対ない
  1:ときどき居眠りすることがある
  2:居眠りすることがよくある
  3:だいたい居眠りしてしまう

■状況 (点数)

1. 座って読書をしているとき (0・1・2・3)
2.テレビを見ているとき (0・1・2・3)
3.人が大勢いる場所で座っているとき(会議中や映画館)  (0・1・2・3)
4.ほかの人が運転する車に乗せてもらっていて、1時間位休憩なしでずっと座っているとき (0・1・2・3)
5.午後にじっと横になっているとき  (0・1・2・3)
6.座って人とおしゃべりしているとき (0・1・2・3)
7.お昼ご飯のあとに、静かに座っているとき (0・1・2・3)
8.自分で車を運転していて、数分信号待ちをしているとき (0・1・2・3)

 
◆過眠症は様々な原因で生じます。

 □睡眠の量的な問題;睡眠時間は十分確保できていますか?

日本人の睡眠時間はわずか40年で約50分も短縮しています。世に遷延する眠気の原因で最も多いのは、睡眠時間の不足によるものです。仕事(交代勤務)や勉強、遊び、家でただなんとなく(テレビ、インターネット、携帯電話、メール、ゲーム)など理由は様々ですが、結果的に現代人は睡眠を犠牲にする場面が増え、睡眠不足が生じやすくなっています。
 睡眠不足者の睡眠覚醒パターンには一つの特徴があり、時間の制約がない週末や休日には平日よりも長く(多くは2時間以上)眠ります。これは平日に蓄積した睡眠負債を、週末や休日の長時間睡眠で補うためです。しかし、睡眠負債が膨大になるにつれ、次第に「寝だめ」が眠気の解消に無効となります。

 このような睡眠不足が続いた場合(3ヶ月以上)、“睡眠不足症候群”と診断されます。
 治療は、十分な睡眠時間を確保させるのと同時に、睡眠衛生指導を行います。寝る前のパソコンやインターネット、携帯電話の使用、カフェインやニコチンなど刺激物の摂取等、誤った睡眠習慣を修正する必要があります。

 □睡眠の質的な問題

 日中の眠気は、睡眠の質的な低下によっても生じます。
 睡眠の質的な低下を招く代表的疾患として、睡眠中の呼吸の停止が繰り返される閉塞性睡眠時無呼吸症候群があります。中高年の男性に多く、過眠症状をきたす原因疾患では最も多いです。特に肥満や顎が小さいひとは注意が必要です。
 治療法としては持続陽圧呼吸療法があります。
 むずむず脚症候群も人口の3%〜4%と比較的頻度の高い疾患です。
 明らかな性差はなく、発症年齢はおもに成年期以降との報告が多いです。何らかの身体的基礎疾患(鉄欠乏性貧血など)が原因で起こる場合もあります。特に寝入りばなに下肢にじっとしていられないような、「むずむず」あるいは「火照り感」を訴え、夕刻以降に症状が悪化します。
 治療としては、基礎疾患がある場合はまずその治療を行います。また、日常生活において誘発因子となるカフェインやアルコール、喫煙を避け、就寝前に脚のストレッチやマッサージを行い、それでも改善されない場合には薬物療法を行います。
 薬物療法としては、レストレスレッグス症候群治療剤(ビ・シフロールやレグナイト)が有効です。
 また、心理的・生理的に過覚醒の状態が慢性する神経性理性不眠症も、眠気の原因となります。 
 □身体疾患・精神疾患による眠気
 様々な身体疾患や精神疾患の症状として、日中の過剰な眠気を生じることがあります。代表的な身体疾患としてはパーキンソン病があります。その他、夜間頻尿をもたらす過活動膀胱や前立腺肥大症も頻回の中途覚醒を介して日中の眠気をもたらす頻度が高いです。
 精神疾患では、気分障害のなかに過眠を呈する一群が存在します。特に季節性感情障害(冬季うつ病)では過食や過眠を呈することが知られており、自然に秋〜冬にかけて症状が出てきます。男性よりも女性の方がかかりやすく、20代での発症が多いのが特徴です。
 治療には高照度光療法が有効です。他にも、非定型うつ病や双極性うつ病でも過食・過眠が多く出現します。 

□日中の眠気を催す薬物の服用

 頻度的に最も注意を要するのは、睡眠薬内服後、翌日まで眠気が残る“持ち越し効果”です。眠前に半減期の長い抗精神病薬や抗うつ薬を内服している場合も、眠気も原因になり得ます。日中に服用するお薬では、抗不安薬のほか、感冒薬や抗アレルギー薬など抗ヒスタミン作用を持つ薬物も眠気の原因となります。その他、パーキンソン病治療薬(ドパミンアゴニスト)や解熱鎮痛剤、β遮断薬、鎮咳薬も眠気を催します。 
 □概日リズム睡眠障害
 主に生体時計の調整障害のために望ましい時刻に朝起きができず、適切な時間帯(夜間)と実際の睡眠時間との間に慢性的なずれが生じます。
 最も多いのは睡眠相後退型で、入眠時刻・覚醒時刻が大幅に遅れ、睡眠を摂れる時間帯が明け方から昼過ぎに固定されます。日本における一般人口の有病率は0.13%(770人に1人)と報告されており、思春期〜青年期に多く(高校生の有病率0.4%;250人に1人)、若年者では男性の方が多いとされています。しかし成年期以降の発症では性差はないと報告されています。睡眠時間は長い傾向にありますが、睡眠の質は正常です。無理をして朝起きても眠気が強く出勤・登校できず、日中過度の眠気や倦怠感、頭痛などが生じます。
 治療としては、生活指導、メラトニンあるいはメラトニン受容体アゴニストの投与、高照度光療法があります。 
 □中枢性過眠症
 若年で、上記の眠気を催す要因がないにもかかわらず、夜間に十分な睡眠を確保していても日中に過度の眠気がある場合は、中枢性過眠症の可能性があります。
 中枢性過眠症は、脳内の覚醒維持機構の障害が原因と考えられています。中枢性過眠症には、主にナルコレプシーと特発性過眠症があります。
 ナルコレプシーの日本での有病率0.16%(600人に1人)と報告されており、家族内発症は少なく、約95%は孤発例です。10代前半の発症例が多く、性差はありません。
 ナルコレプシーの特徴は、睡眠発作(日中、突然に耐え難い眠気に襲われる)、入眠時幻覚、睡眠麻痺(金縛り)、情動脱力発作(喜怒哀楽の気持ちが高まった時に全身、あるいは膝、腰、顎などの骨格筋の緊張が失われる)です。ただし、情動脱力発作を伴わないナルコレプシーもあり、診断には終夜睡眠ポリグラフテスト(PSG)や睡眠潜時反復テスト(MSLT)が必要です。
 治療は、睡眠不足を防ぎ、規則正しい睡眠習慣を身につけることを基盤に、薬物療法を併用します。日中の眠気に対して、中枢神経賦活薬であるモダフィニールやメチルフェニデートなどが用いられます。
 特発性過眠症の有病率はナルコレプシーの約10分の1程度と考えられており、稀な疾患です。発症は25歳以下のことが多く10歳未満は稀で、性差に関してはないというものと、女性に多いという報告があります。
 特徴としては、日中強い眠気が持続し、昼寝の時間が長い(1時間以上)状態が3ヶ月以上持続することです。常に睡眠が必要な状態が持続し、睡眠や過眠により眠気が軽減することはありません。
 特発性過眠症は夜間の睡眠時間が10時間以上の「長時間睡眠を伴う特発性過眠症」と、6時間〜10時間未満の「長時間睡眠を伴わない特発性過眠症」とに分類されます。長時間睡眠を伴う特発性過眠症の特徴は、起床が困難であることです。夜間睡眠からだけではなく昼寝から目覚める時も覚醒に困難を伴い、目覚まし時計で覚醒できず、覚醒時に爽快感を伴うことはありません。
 治療は、睡眠衛生指導の徹底が重要で、生活習慣に関する指導を行います。薬物療法としてはナルコレプシーと同様の中枢神経賦活薬が試されることがありますが、効果は一定ではなく、長期に渡って安定した効果が得られるのは少ないのが現状です。

 このように、中枢性過眠症の診断・治療には専門的な医療機器や知識が必要であるため、睡眠医療専門機関への受診が必要です。 

当サイトが提供する文章・写真等すべてのデータを権利者の許可なく複製、転用、販売等、二次利用することを固く禁じます。
Copyright2003MIK@N communications ALL right reserved.